僕は君を連れてゆく
第4章 春の色
「ニノのこと知ってたんですね?」
何かを洗いながら話しかけてくる。
「今日の昼間会ったんだよ。道聞かれて…」
「そうなんですね。今日からここに同居なんですよ。」
「じゃぁ、ここの道を聞いてたのかな?って、あの地図…あれじゃ、わからないと思うよ。」
「そうかな?あれしか書きようがなくて…」
パスタを鍋に入れて茹でているようだ。
「大野さん、辛いの食べれます?」
「わりと、イケるよ。」
「じゃ、ちょっと多目に…」
いい香りがしてきた。
リビングのドアが開いた。
「お騒がせしました…」
「ニノ、もう出来るよ。」
ペタペタと素足で松本くんのいるキッチンに入っていきフライパンを覗きこんだ。
「美味しそうな匂いする!ペコペコだよぉ。」
上目遣いに松本くんを見る。
そんな彼に俺は釘付けだった。
「あっ、俺。二宮和也って言います。今日はありがとうございました。」
俺の視線に気がついて自己紹介してくれた。
「大野智です。俺こそ。ありがとう。俺はあそこでイビキかいてる奴の同僚なんだ。」
「ハイ!出来たよ~!!」
「「美味しそう‼」」
声が揃って二人で顔を見合わした。
「アンチョビはなかったので…こっちで。」
松本くんはペペロンチーノを作ってくれた。
「これが食べたかった~!」
「大野さんに道聞いたの?」
「あんなのじゃ、ちっともわかんないよ。」
「確かに…あれじゃ…」
「でも、おーのさんの説明も面白かったよ?」
「えっ!あぁ…あれね…」
「春にならないとわからない目印教えてくれんの。」
そう言って、ペペロンチーノはチュルっと口の中に入っていった。
唇に鷹の爪が着いてる。
目があったから、口のところを、ツンツンとして着いてるぞ、って教えてやった。