
僕は君を連れてゆく
第35章 空の色
「ねぇ、俺にもちょうだい?」
「マジか?」
大野さんの吸ってるタバコを咥えさせてもらった。
「ゲホゲホっ!!!」
不味い!
苦しい!
「おーい、大丈夫かよ?」
俺の背中をさすりながら笑う大野さん。
「美味しそうに見えるのにな…」
「ニノはいいんだよ、吸わなくて…」
まだ、半分も吸ってないのに携帯灰皿にタバコを押し付けた。
スゥーと唇から白い煙が。
「さぁ、本当に行くぞ!」
また、車に乗った。
今度はラジオをかけて、芸人さんが最近のワイドショーについて話したりしてて…
俺は大野さんが何を考えてるのか、それを読み取ろうと思ったけど…
全然、分からなくて。
だんだん、遠くなる海と、近くなる空を見てた。
***
「御待ちしておりました。」
淡いブルーの着物を来た女性が出迎えてくれた。
ウエルカムドリンクとして桜茶が出された。
湯飲みの中には桜の花弁があった。
「桜の入ってるお茶なんて初めて…」
「塩漬けにした桜を使っております。」
「そうなんですか…」
「お部屋にもお茶請けをご用意しております。」
大野さんがチェックインしてる間にお茶を飲んでいた。
ホテルと名はあるけれど、伝統ある建物で女将をはじめ、仲居さんたちも着物を着ていた。
「温泉旅館殺人事件みたいだな。」
「あっ、俺も思った!」
部屋に案内されたら本当に露天風呂がついていた。
「24時間入れます。お夕食は最上階でのバイキングとなっております。お煙草は奇数階に喫煙室がございますのでそちらをご利用下さい。」
女将は一通り説明したら頭を下げて部屋を出ていった。
部屋のテーブルにはお茶請けの温泉饅頭があって。
大野さんはそれを口に入れて甘いと言った。
俺はドキドキしながらお茶を淹れた。
だって、あの扉の向こうは露天風呂なんだから。
「どうぞ。」
「気が利くな。」
「「っあちぃ!!!」」
俺だけじゃない。
大野さんもドキドキしてる。
