僕は君を連れてゆく
第35章 空の色
トイレにこもり、吐いた。
まさか、こんなとこを見せるなんて。
恥ずかしいし情けない。
大野さんは心配して俺の背中をずっと擦ってくれる。
「わりぃな。やっぱり、飲ませ過ぎたよな?」
「美味しかったし…どんどん、飲んじゃった俺が悪いんだよ。」
「本当にごめんな。風呂はさ、明日の朝、入るか!」
大野さんは布団を直してくれてる。
せっかく、一緒にお風呂に入れると思ったのに。
大野さんは俺に着替えろって浴衣を渡してくれた。
全て吐いたらスッキリしたからお風呂に入れそうなんだけど。
「お風呂、いいの?」
「明日も入れるんだから、明日でいいよ。」
なんとなく、大野さんの態度が素っ気ない気がして。
脱衣場から部屋に戻ったら大野さんはテレビをつけていた。
「飲み物、買ってくるから先に寝てろよ。」
「俺も行くよ。」
「寝てろって。な?」
大野さんは財布を持って本当に出ていってしまった。
「……」
初めての旅行だったのに。
何より、好きな人と旅行に行くってこと事態が俺にとっては初めてなのに。
あんなとこ見せられたら、100年の恋も冷めるよね。
歯磨きをして大野さんの寝てた布団に横になろうかと思ったけど、となりの布団に入った。
目を閉じたら今日の大野さんとの一日が甦ってきてなんだか、泣けてきた。
***
ニノが吐いてしまった。
ちょっと、浮かれて飲ませ過ぎちゃった。
お酒が入ったニノは普段の三割増しで可愛いからつい…
大人気ないよな。
でも、吐いて苦しそうに、眉間を皺を寄せている姿はアレの時を思い出させて…
どこまでなんだ、俺はと…
このまま一緒にいたら、押し倒してしまうかもとコンビニに逃げてきた。
それに…浴衣姿のニノは普段の五割増しだぞ!
もう、抑えが利かないと思って。
でも、出ていく時にチラっと見えた顔は寂しそうだった。
同じ布団で寝るくらいなら許されるかな。
「早く、戻ろ!」