僕は君を連れてゆく
第35章 空の色
部屋に戻るとテレビの明かりだけで薄暗かった。
ニノは…
「寝てる…」
布団にくるまり眠っていた。
布団から覗く、少し緩んだ浴衣の胸元。
眠っている顔は少年のように無垢なのに。
襲ってくれってか?!
「ダメだ…風呂いこ…」
このまま見てるなんて拷問だ。
気を取り直して露天風呂へ行くことにした。
予約するときはなんとも思わず露天風呂がついてる部屋が空いていたから予約したんだけど。
部屋についてちょっと、いや、かなり、驚いた。
入り口を入るとすぐに和室でテーブルと座椅子の綺麗な部屋で。
その奥が露天風呂で。
仕切りに引き戸がついてるんだけど。
その引き戸の下1/3はただのガラスで。足元が見えるようになっている。
脱衣場も畳のいい香り。
タオルも真っ白。
そして、さらに脱衣場から露天風呂への扉も同じようになっていて。
ここで、着替え…
エロい…
ニノがここで着替えるのも想像してヤバい…
「洗い流そ…」
露天風呂に出たら、いい風が。
真上に見える月が海に写っている。
海側は車の往来も少なく、波の音が遠くに聞こえるだけ。
「ふぅー」
風呂の縁に寄りかかり空と海を眺めた。
空と海の境はどこなんだろう。
こんなに真っ暗で静かな時間を過ごすことなんてあっただろうか。
「おおのさん?」
ニノが扉を開けて顔を出した。
顔色も良くなってスッキリしてる。
「起きたか?」
「うん。一人で入っちゃったの?」
「…あ、わりぃ…」
「俺も入る!」
少し拗ねて見せたけど扉を閉めて浴衣を脱ぎ出した。
脱いでる様子がよーーく見える。
あっ…
パンツ脱ぐのためらってる。
あっ…
脱いだ!
タオルを探してる!
可愛いなぁ…って、俺は変態親父かっ!
カチャと扉を開けてトコトコと爪先だけでやってきた。
かけ湯をして風呂のなかへ。
「ふぅー」
「ニノもオッサンだな!」
「「アハハハハ!!!」」