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僕は君を連れてゆく

第37章 背中合わせ


潤が窓を開けてそれに答える。

「マジだ…明日までにもう1回見ておかなきゃ…サンキュ。」

同僚だろうか。
挨拶するべきか迷った。

さっき、上司にはいいって言われたし。

「パートナー?」

向こうから俺に触れてきた。

「そう。」

「こんばんわ。俺、同僚の櫻井と言います。」

俺に合わせて目線を下げて挨拶してきた。

「初めまして。いつもお世話になっています。」

外向きの、営業スマイルで答える。

「綺麗な人だな!」
と、潤に櫻井さんは言った。

「そうだろ?」

「見せつけんじゃねぇよ!じゃあ、また、明日な!」

俺はもう一度、櫻井さんに向けておじきをした。

車を発進させる。


「そうだろ、なんて恥ずかしいじゃん…」

「あー言っとけばその場で話は終わるだろ。」

「そうだけどさ…」

そんなこと言われるなんて思いもしないから
ちょっと、嬉しい。

チラっと潤の方を見たら、目が合った。

なんか…

なんか…

いい雰囲気じゃない?

手、繋ぎたい。

軽く握られている潤の手に自分の手を重ねた。

ピクリと瞼が動いた。

「ねぇ、覚えてる?昔、あそこでよく潤の仕事終わるの俺、待ってたよね…」

「そうだっけ?」

「そうじゃん!それで、俺、待ちくたびれて寝ちゃってさ…」

結婚するなんて思わなかった…

「懐かしい?」

「なんか、思い出した…」

帰って、待たせて悪かったからってトロトロに甘やかされて。

この流れ…

この雰囲気…

絶対にそうだよね?

絶対に…

シャワーまだ、浴びてないよ。






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