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僕は君を連れてゆく

第1章 背中

《背中3》


放課後。


昼休み。体育準備室までは行った。
でも、ノックすることは出来なかった…

「だってぇ…無理だよ…」

「何が?」

「えっ?ナニ?」

「何が、無理なんだよ?」

「無理なんて言った?」

「言ってるよ…ため息ばかりだな…」

俺の前の席の松潤が笑ってる。

心の中の声が漏れているらしい。まいったな…

「あ。行ったの?あいばちゃんのとこ。」

「行ったょ…」

「なんだったの?用事?」

「…んない…」

「はぁ?」

「…わかんねぇよ!」

「ニノさ…あいばちゃんの話になるとアレだよね?」

口に手をやり、フフフって…濃い顔…

「アレってなんだよ?」

「いつもの調子がでないじゃん?」

そう言って俺の両頬を、びよーんと引っ張った。

「…ん…あ…」

「結構、好きだよな?」

「イタイって!もう!」

へっ?今、何て言った?
頬を、さすりながら松潤を、うかがう…

「ニノ、あいばちゃんのこと結構好きでしょ?」

やっぱりな~なんて、言って鞄を持って帰ってしまった。

いや、おい。否定するから戻ってきてくれ!

「いたいよ…」

昼休み、もし体育準備室に行っていたらどうなっていたんだろう。
何か、言われるんだろうか…
気持ち悪いって貶されるのかな…


それとも…あの大きく優しい手でもう一度…

「…や!」

肩を叩かれた‼

「うぉっ‼」
顔を上げるとそこには…

「相葉せんせ…」

「なんで来なかった?」

「えっ?」

「昼休み。」

「……」

主が帰った俺の前の席に相葉先生が座った。

「ん?」

首をかしげて俺を見る。

その瞳で俺だけを見てくれたらいいのに。

「なんの用事だったんだよっ。貴重な昼休みなんだから、せんせいに付き合ってなんかられないよ!」

「そうか。」

立ち上がって俺の席に何かを置いた。

「一緒に作ろうと思って。」

紙ヒコーキだった。

相葉先生を、見た。

俺の好きな…

「せんせい…」


明日の放課後、体育準備室に来るように。
そう言って、相葉先生は教室を出ていった。

先生の紙ヒコーキを飛ばした。

伝えてもいいのかな…

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