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僕は君を連れてゆく

第1章 背中

《背中4》

次の日。


昨日は全然、眠れなかった。

寝たら今日になっちゃう。今日になったら先生のところに行かなきゃならない。

行かなきゃいい。わかってる。そうすればいいって。
でも、行きたい自分がいる。
行って、話したい。
先生と二人で話したい。

「あくびばっかだな?」

「う~ん。昨日、眠れなくて…」

「ゲームしすぎ?」

「そんなとこ…」
そう言って机に頭をつけた。
次の授業はなんだっけ?

「着替えようぜ‼」
体育かっ!寝不足なのに…休もうかな…

「おぃ!あいばちゃん。もう校庭にでてる!」

窓に目をやると校庭を整備してる先生がいて…
玄関の方に向かって手を振っているところだった。

誰に手を振ってるんだろう?

着替えながら見てると女子が数人、先生のそばまで走ってきていた。

女子に手を振ってたんだ…

そりぁ、手を振られたら先生の性格だ。満面の笑みで手を振り返すだろう。
優しい先生だもん。
見て見ぬふりなんてしない。

女子と楽し気に話している。
どんな話だって真面目に聞いてくれる。

「相変わらず、モテモテだなっ!」
松潤が言う。

「…だな。」

眠れなかったせい。
この、モヤモヤした気持ちは。

眠れなかったせい。
この、複雑な気持ちも。


体育の授業が始まった。
サッカーの試合。
男子はクラスを半分に分けて試合をする。

開始の笛がなった。

でも、足が動かない。

クラクラする。

「っにのみやっ!」



目を開けたら白い天井が見えた。

膝が痛い。

「あら?目が覚めた?」

養護教諭の先生が優しく声をかけてくれた。

「はい。昨日、眠れなくて…」

「相葉先生が運んで来てくれましたよ。物凄い汗をかいてね。もう少し寝ていなさい。まだ、顔色がよくないわ。」

あとでお礼を言いなさいと言ってカーテンを閉めて出ていった。

「せんせいが…運んでくれたんだ…」

恥ずかしい…

でも…嬉しい…

「ウフフ…」

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