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僕は君を連れてゆく

第37章 背中合わせ

◆◆◆

どうしてこんなことになったんだろう…

家に帰るなんてことは出来ない。
でも、ここにずっといるわけにはいかないし。

誰か。
誰に?

櫻井さん…

携帯の電話帳を開いて櫻井さんの電話番号を見つめた。

今、この状況で電話をかけるということが
どういうことか。

もし、これからも潤との関係を続けていくなら、
頼ってはいけない人だ。

どうしたらいいんだろう。

もうすぐ、日付が変わる。

今までだって、一人で過ごす夜はいくらだってあった。

慣れてるはずじゃん。

24時間営業のファミレスに入った。

潤と夕食は食べたからお腹はいっぱいだし。
コーヒーを注文した。

入り口のそばの四人掛けの席に向かい合わせで座る男女。
時々、視線を絡めては手元に視線を戻して。
テーブルに置かれたグラスにはまだたっぷり飲み物が入っている。

緊張してるのかな?
可愛いな。

そう言えば、俺らにもあったな。

俺たちがまだ、付き合う前。
それなのに、関係だけ持っちゃって…
会うものホテルばっかりだったのに、急に潤が
ファミレスに入ったんだ。

“しばらくヤらないから”とか、わけのわからん
宣言されて。
俺はどーしていいか分かんなくてひたすらジュースを飲んで。

潤は潤でチョコレートパフェを頼んで。

甘いものが好きなんだって驚いたんだよな。

俺ら、俺らのこと何にも知らないねって。

それから、潤は色んなところに連れていってくれたんだ。
時々、サプライズでプレゼントをくれたり恋人みたいにしてくれるから嬉しくて。



二人で手を繋いだあの日、人生で一番幸せな日。



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