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僕は君を連れてゆく

第37章 背中合わせ


一時間程たって、櫻井さんがきた。

「……。」

「………。」

向かい合わせに座り櫻井さんはコーヒーを注文した。

「大丈夫?」

俺は頷いた。

「そう?そんな風にとても見えないけど…」

目を合わせたらやっぱり優しい顔で。
潤と言い合いになったことを話した。

「櫻井さんに電話しようか、迷って…でも、しちゃ、だめだろうなって…」

「だけど、あんなメールくれたらどうしたんだろう?って思うよね?」

「……。」

なにも言えない。
その通りだから。

「なんで、電話したらダメだろうなって思ったの?

大きなため息をついて少し強い口調で俺を問いただす。

「だって、櫻井さんに電話するってことは潤が一番、嫌がることだから…」

「二宮くんさ…、ズルいよ。潤と喧嘩して俺に試すようなメールして。これで俺が連絡しなかったらどうしてたの?」

「でも、メールするのも迷って…櫻井さんがメールくれたからそれの返事をしただけ…」

「だから、それがズルいって言ってるんだよ。俺の報告のメールなら了解の一言だけで良かった。それなのに俺に迷惑をかけるかもしれないって、そんな内容きたら気になるに決まってるじゃん…」

「そんなこと…」

潤にも言われたな。
俺の行動は遠回しに何かを伝えようとするって。


「俺が言うことじゃないけど、伝えなきゃ。
素直に自分の気持ちを。また、拒絶されるかもしないって思うよね?だから、臆病になってしまうんだ。だから、それを伝えればいいんだ。」

俺は涙がこみ上げてくるのを必死に堪えた。

「それでも、もし…」








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