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僕は君を連れてゆく

第40章 沼

―said O




入試の時だ。

受験票と中学の学生証を校門を入ったところで先生たちに見せなきゃならなくて。

前から担任に言われていたのに俺は門をくぐってから鞄のなかに手を突っ込んだ。

「あれ?どこだっけ?」

待ち構えていた、高校の先生たちは呆れたように俺に視線を送り、片手で後ろに下がれと合図してきた。
鞄のなかに手を突っ込んだまま後ろに下がっていったらドンっと何かにぶつかった。

「いってぇ!」

「ご、ごめんなさっい!」

何かを踏んだ感触がしてすぐに謝った。

傘を差ししゃがみ爪先をおさえる男が。

それが松本くんだった。

「あ、ごめっ、ごめんなさいっ!大丈夫ですか?」

入試の日は弱い雨が降っていた。

松本くんは俺に傘を差し出してくれたんだ。

「濡れちゃうよ。」

「え?あ、でも君も…」

「見つかったの?」

「あ、うん。あった。」

「並ぼうぜ!」

一緒に一つの傘に入ったんだ。






無事に高校に入学出来て、入学式の日に松本くんの姿を探した。


一年生も二年生も松本くんとはクラスが分かれてしまったんだ。

三年生になってはじめて松本くんと同じクラスになったとき…

白い肌に艶のある黒髪。

手首に光るシルバーのアクセサリーがとっても
お洒落で。

話しかける勇気なんてなかったけど見てた。


松本くんの周りには常にお友達がいて。

綺麗な顔立ちなのに大きな口を開けて大きな声で
笑うんだ。



いつか、いつか、あの時のお礼がしたい。


傘、ありがとうって言いたい。


嬉しかったって言いたいんだ。






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