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僕は君を連れてゆく

第40章 沼

―said O


教卓に重ねられた数枚のCD。
タイトルだけではどんな歌か想像つかない。
だけど、一枚だけタイトルを見て歌を聞いたことがあるのがあった。
「ふるさと」だ。

CDをかけたら聞いたことあるって松本くんが言って、鼻唄を始めたからそれに合わせて歌ってみた。

歌うことは嫌いじゃない。

むしろ、ストレス発散にもなるから。

歌ってみると、歌いやすい。

「歌うにもいいね。」

楽譜をピアノに立て掛けてピアノを弾いてみる。

うん。

弾くのもいいかも…

ひと通り、弾いてピアノから手を離したら
それまで、静かだった松本くんが

「すげぇー!大野、すげぇー!大野、歌、めちゃくちゃ上手いんだな!」

褒められた!

俺の顔見て綺麗な顔をしわくちゃにして笑ってくれる。

今までに感じたことのない気持ちが俺のなかに。


「めちゃくちゃ上手いよ?音楽の授業、普通にやれば赤点にならないんじゃないの?」

「普通にやってるつもりなんだけどね。」

「やってねぇよ。いつも寝てるじゃん。何度も先生に起こされてるじゃん。」

いつもって…
俺のこと見ててくれてるんだ…

「そうだっけ?」


「他のも歌ってよ。」

と、次から次へと歌ってって。


松本くんが俺の歌を聞いて褒めてくれる。


こんなに褒めてもらえるなら、もっと真面目に
授業受けてればよかったな…

松本くんがこうして、笑って、褒めてくれるなら
ピアノ弾いてもいいかも。


そうすれば、また…

あっ、そうか…

そうしよう。



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