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僕は君を連れてゆく

第40章 沼

―said O





「大野、突っ走るなよ?」





六時間目の自習の時間を使って合唱コンクールの練習をした。
やっぱり、合わせるのって難しい。
松本くんの指揮ともなんだか合わないし。

結局、CDをかけて練習することになって。

松本くんが指揮をしてそれに合わせてみんなが歌ってる。

楽しそうに指揮する松本くんと、楽しそうに歌うみんなを見て、しっかり、やらなくちゃって。


六時間目が終わり、中居先生がそのまま準備室で帰りのHRをして下校になった。

「先生、ピアノやっていきたいんですけど…いいですか?」

「やっていけ。帰り職員室寄ってくれ!」

松本くんに声をかけようとして。

松本くんの周りにみんながいて。

なんだか、寂しくなった。


そこに加わって話をしたいのに。


やっぱり、俺じゃないのかな。


松本くんといたいのに、俺があそこにいたいのに。


「大野、突っ走るなよ?」

岡田が俺に耳打ちしてきた。

「松潤と練習したい気持ち、わかるけど。大野のペースと松潤のペース、あるんだからな?」

わかってる、わかってるよ。

でも、でも…

「ちゃんと、気持ち伝えてから、な?」

わかるけどさ…


「大野、練習してくの?」

「あ、うん…でも、一人でやってくから…平気…」

「一緒にやろうよ。」

「いや。今日はいい。」

松本くんと目を合わせずピアノの前に座った。

岡田が呆れたようにため息をついたのが聞こえたけど、こういうことだろ?

岡田が松本くんの肩を叩いて何か話してるけど。

気にしない。

そんなに顔を近づけて何を話してるかなんて。

松本くんが俺を見た。

でも、俺はそれをそらした。

「大野、またな!」

俺は手だけ振った。




一人でピアノを弾いても楽しくない。

面白くない。


「ダメだ、帰ろ…」


職員室に寄って中居先生に声をかけて、教室にバックを取りに戻った。

ドアを開けたら、松本くんがいた。

「あ、終わった?」

「なんで?帰ったんじゃ…」

「あ、うん、まぁ…」

どうして…
どうしてここに。

俺は松本くんに向かって真っ直ぐ歩いていく。

立ち上がった松本くんを俺は抱き締めた。


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