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僕は君を連れてゆく

第40章 沼

―said M


「時間見てさ、大野の練習付き合ってやってよ。」

岡田にそう言われた。
でも、当の大野は俺と目も合わしてくれなくて。

なんだよ。
お前が、大野が、喜んでくれるんじゃなかったのかよ…
大野が、一緒にやろうって言ったんじゃないのかよ…

「あいつ、こういうのわかんないからさ。ちゃんと、イヤだとか、出来ないって言わないとダメだからな。松潤がきちんと見てやってくれよ?な?」

岡田は大野とは中学からの同級生で気がついたら一緒にいたと話してた。
俺と大野との間にはない二人の空気があって、
羨ましい。

「あれ?帰らないの?」

まっけんが鞄を持ち声をかけてきた。

「あ、うん…」

「Oh!大野くんね?」

俺は頷いた。
まっけんとは何だかウマがあって気がついたら
仲良くなっていた。
潤くん、潤くんと最初は呼んでくれていたけど、
気がついたら潤と呼ばれるようになり。

帰国子女のせいもあって、大胆で。
感情表現が豊かなんだ。

「潤、素直になりな。」

と、抱き締めてきた。

「……」

なんで、抱き締められてだよ…

「潤、いい香り…」

「なぁに、言ってんだよっ!」

「じゃぁね?ばーい!」

まっけんに背中を押してもらって、
もう、認めるしかない。

準備室までもう一度、行った。

覗くと…
なんだか、元気のない大野がいて。
頭を抱えたり、髪を掻きむしったり…
なにかに、悩んでるような…

声をかけにくくて、教室に戻ってきた。
でも、帰る気にもなれなくて。
大野の鞄が机にあったからここに戻ってくるだろうと思って携帯を弄ったり、外を眺めたりして大野を待った。

「まだかな…」



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