僕は君を連れてゆく
第40章 沼
「…ん…っ…」
何度も、啄むようなキスをされる。
ダメだ…これ以上は…
「松本くん…」
気がついたら、腰に回った大野の腕。
右手は俺の後頭部に回っていて。
大野の荒い息遣いが。
俺を興奮させる。
「ね、まて…や、やん…」
「松本くんっ…」
大野の手がベルトにかかる。
「な、まてって…」
止めても、聞こえてないのか動き続ける大野。
焦ってるのか、興奮してるのか、なかなかベルトは外れず、ズボンのファスナーに手がかかった。
「…っ!おいっ!やめろっ!」
流されそうになったけど、ふと岡田の言葉を思い出して。
思い切り肩を押した。
「はぁ、はぁ…松本くん…」
なんで止めるの?と言うような顔で俺を見る。
だって、これじゃあ…
「なんで?」
「なんで、こんなことするの?」
「いやだった?」
「いやっていうか…」
嫌じゃない。
けど、キスするっていうのは誰ともでもするわけではなくて。
「なんでだよ…」
「なにが?」
天然なのか、バカなのか。
大野の顔からは何も読み取れなくて。
俺から言うの?
「あっ!松本くん、キス始めてだったの?」
はぁ?
「そっか、そうだったんだ…松本くん、人気者だからって思ってたけど…」
人気者だからじゃなくて、
そうじゃなくて、
椅子にもう一度、座らされてその前に膝まづいた大野は、俺の両手を握った。
そして
「俺が、松本くんの初めてになってあげるね。」
手の甲にチュッとキスをして
「好きだよ…」
キスをした俺の手の甲に頭を乗せた。
頭を乗せたまま俺を見上げて微笑む。
「松本くん…」
俺の名前を呼んで、また、指にキスをする。
「やめろって…」
「なんで?」
大事なものを触るように俺を触ってくる。
嬉しいような、恥ずかしいような。
「好きだよ…松本くん…」