僕は君を連れてゆく
第40章 沼
合唱コンクールは準優勝だった。
帰りに俺、大野、まっけん、岡田でファミレスに寄った。
「まっけーん!何すんだよぉー!俺の!俺の!」
もう、泣きそう。いや、泣いてるのか。
岡田がまっけんに抱かれている。
ファーストキスだったらしい。
以外だよ。
「なに?足りないの?でも、これ以上はここじゃ…」
と、まっけんは岡田の顎を掴んだ。
「え、え、待って、すんの?すんの?」
「あのさっ!」
二人のイチャイチャに気を取られていたら、
大野が止めにはいった。
「あの、ありがとう。俺、松本くんを守りたかったのに…昨日は我慢出来なくて…つい…だって、松本くんの唇って柔らかくて…吸い付いてくるんだ…」
待て、待て、待て、待てぇぇぇーーー!!!!!
何を言い出したかと思ったら!
勘弁してくれよ!
「おいっ!何言ってんだよ!てめぇ!」
「落ち着いて、潤!」
「落ち着いてられるか!何、恥ずかしいことをベラベラ、ぬけぬけと口に出してんだよ!」
大野は俺が怒ってるのに、俺の顔をただ、ボーって見てる。
「帰るっ!」
俺は席を立って鞄を、乱暴に背負い店を出た。
バーカ
バーカ
バーカ
大野のバーカ
一刻も早く店から離れたくて早足になる。
ザッ、ザッ、ザッと足元に転がる小石も蹴って。
信号につかまって。
あんなこと、みんなの前で言うことじゃないだろ…
大野と俺の
ひ・み・つ
じゃないのかよ!
「松本くんのこと守りたかったのに…」
大野の言葉が頭に甦る。
守るって、俺は男だっつーの。
信号が青になって横断歩道を渡る。
別にいいけどさ…
いいんだよ…別に…
でもさ、大野はする方だからいいけどさ、
俺は受ける方だから…
それを受け入れたのは俺だから、いいんだけど。
みんなの前でそれを晒せる勇気はまだ持ててないんだ。
キスのその先だって…
期待してないわけじゃない。
それこそ、今日かな?とか思ってたのに…
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