僕は君を連れてゆく
第40章 沼
スマホが震える。
画面には“大野”の文字。
スワイプして耳にスマホを当てた。
『あっ、もしもし?』
「………」
『どこにいるの?なんで、先に帰っちゃうの?』
「………」
なんで、大野は変わらないんだよ…
俺を好きなんじゃないのかよ…
「俺は…やだ…あんなの…」
『あんなの?あんなのってなに?なんのこと?』
「ごめん…」
大野が何か話してるけど、きちんと、聞かず通話を終わらした。
家に帰ってきて夕飯を食べて、お風呂にも入って。
大野から、連絡はない。
当たり前だ。俺が無理矢理電話を終わらせたんだから。
でも、LINEくらいくれてもいーじゃん。
って、俺ってめんどくさい奴なんだな。
大野とのメッセージのやり取りを振り返りながら
大野のことを考えていた。
なんで、こんなにハマっちゃたんだろう。
スマホが震える。
「もしもし?」
『潤?仲直りした?』
まっけんだ。
「仲直りって…別に…」
『怒って出ていったんだから、仲直りでしょ?潤が出ていったあとさ…』
まっけんから聞いたのはこうだ。
俺が出ていったあと。
「大野、追い掛けろよ!」
「潤って、見た目と違って純情boyだからね…」
「なんで、黙ってるんだよ!早く、行けって!」
「そのギャップがたまらなくいいんだよね…」
「ねぇ、まっけんくんはさ、松本くんと友達なんだよね?」
「はぁ?」
「なんで、潤って呼ぶの?純情boyって松本くんの何を知ってるの?」
「……」
「……」
「松本くんって、怒っても可愛いんだね…」
「……」
「……」
「チョコレートパフェ残してちゃった…食べちゃお♡」
岡田とまっけんは、俺を追いかけるように言ったけれど、俺が残したチョコパをパクパク食べたそうだ。
怒って出ていった俺のどこが可愛いのか、聞いてもないのに話してたって。
バカじゃねぇの…
俺は怒ってんだよ…
可愛い、可愛いって…
バカじゃねぇの…
「じゅーん!お友達きたわよー 」