僕は君を連れてゆく
第43章 仰せのままに
お屋敷の中から私(わたくし)を呼ぶ姫の声。
姫の部屋へ入ると姫は明らかに不機嫌だった。
最近の姫はいつも、何かにイライラしている。
姫は、今年19になった。
ますます、美しくなる。
姫が男であると知ってるのは、私と女王さまと、私の母。母は女王さまの世話役だった。
姫を取り上げたのは私の母だ。
生まれてから私たちは二人でいた。
私の方が一つ年上だったが負けず嫌いな性格で私がやることをなんでも真似してきた。
でも、一年の差は大きくて。
出来なければすぐに泣いた。
泣いて、拗ねて。
泣き疲れて眠ってしまう。
背負ってよくお屋敷に連れて帰った。
ジュンが男だと、知ったとき私は複雑だった。
この國は王家に生まれたものは20の時に結婚する相手を決めなければならないという暗黙のルールがあった。
ジュンのお兄さま方もそのルールに乗っ取って順に結婚していった。
だから、ジュンも…
でも、ジュンは姫だと思っていたから。
向こうから結婚を申し込まれてもこちらが納得しないとそれを受け入れることは出来ないのが姫を送り出すルール。
でも、本当は男で姫の姿をしているジュンは?
そこらの着飾ったどこかの國の姫たちよりもジュンは美しい。
ジュンさえ、頷けばお相手なんてすぐにみつかるだろう。
そんなとき。
女王さまから私にもいい相手を探さなければ、という話が出た。
私は驚いた。
このお屋敷にずっと仕えるつもりでいたのに。
まさかの言葉に私は少し苛立った。
「…私はそのようなことに興味はございません。ここに生涯、身を捧げるつもりでございます。」
「ショウにも幸せになってもらいたいのよ。」
「私は十分に幸せでございます。ここで、姫のおそばにいられれば…」
と、咄嗟に出たこの言葉。
自分でも気がつかなかった。
私は、姫のそばにいたいのだ。
俺は、ジュンのそばにいたいのだ。