僕は君を連れてゆく
第43章 仰せのままに
王と母が話しているのを聞いてしまった。
ショウにいい人を見つける、と。
俺の世話役なのに、なんで、俺の許可もなくそんな話がでてるのか腹が立った。
「だって、ジュン、あなただってもうすぐ20よ。いい人が現れればあなただって。」
「ジュンの結婚だって我が國のためになる。相手は慎重に選ばなければならないよ。」
「ショウは?ショウはなんて言ってるんだよ。」
「ショウは…自分からそんな話が出来るわけないじゃない。」
「嫌。結婚なんて。そんなのしたくない…」
王たちから逃げるように部屋に帰ってきた。
ベットに体を預けて枕に顔を埋めた。
グリグリと顔を枕に擦りつけたら、頭に着けていた髪飾りが指に引っ掛かった。
「いたっ…」
指を見ると、血が出ている。
「うわっ!血だ…」
慌てて起き上がり鏡台の前に座る。
鏡台の前には泣きそうな顔をしている俺がいて。
普段、この髪を編んでもらっているとき、ショウは俺から少し離れたとこにいる。
でも、鏡の中でショウが見える距離にいて。
あるとき、ショウが言ってくれた。
「姫の髪は本当に綺麗ですね。髪を編んでらっしゃるとき、キラキラと艶めいている。きっと、柔らかいんでしょう。」
でも、ショウは俺の髪に触れてくれたことはない。
この髪飾り。
ショウの亡くなったお母様のペンダントを髪飾りに作り変えてもらったもの。
ペンダントはショウの首にずっとかかっていた。
俺が10才になったときショウが俺の世話役となった時にショウが俺にくれた。
楕円形のそれは、小さいパールが敷き詰められているものでどこのパーティーに行くときもそれを身に付けた。
「あっ…取れてる…」
パールが数個、取れてることに気がついた。
ショウが俺から離れる。
なんで?
どうして?
そばにいてよ。
ショウ。
髪飾りをとって、編んでいた髪をほどいた。