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僕は君を連れてゆく

第43章 仰せのままに



縫い師の店に着いた。

「姫、お手を。」

馬車から降りるときいつもショウが手を貸してくれる。

ショウの左手に自分の右手を乗せた。

「姫、どうされました。人差し指。」

「あ、」

昨日、ショウから貰った髪飾りを直そうとして、指を切ってしまったんだ。

「痛みますか?」

銀縁眼鏡の奥のショウの真っ黒な瞳。

悩んだり、考えたりするときに出来る眉間のシワが好き。

体がじわりと熱くなる。

「別に。」

「そうですか。」

縫い師の店はそれは華やかで。

たくさんの生地に装飾品がところ狭しと並べられていた。

「すごーい!なんか、面白くない?」

生地などをたくさん広げて見せてくれる。

「ねぇ、この皮でブーツ作れる?」

縫い師は俺の言葉にテキパキと動いてくれて。

ドレスのことなんて忘れて乗馬の時に履きたいブーツや普段着るときのワンピースなどの話に没頭していた。

「姫、ドレスを。」

「わかってる!」

普段、パープル系の色が好きだからその色合いの生地を眺めていて。

ショウが赤いストーンを突っついている。

「気になるの?」

「いえ…」

「赤もいいね。ねぇ、こっちも見せて?」

ショウが好きなら赤もいいかも。





「姫、お天気が…」

ショウの言葉に店の窓から外を見たら、グレーの雲が増えてきている。

「帰りましょう。雨が降ると道がぬかるんで馬車では帰れなくなります。」

ショウの言うことは最もだ。

俺たちはすぐに馬車に乗った。

見繕ったドレスは届けるように手配して。

「姫が赤を選ぶなんて…」

だって、ショウが好きな色だから。

「変?」

「いえ、よくお似合いでした。」

「そう…」

たったそれだけなのに、嬉しくて。

「あっ、降ってきましたね…」

どんどん、雨足が強くなっていく。

「どこか、休めるところを探しましょう。」

少し進むと馬車はやっぱり動かなくなってしまった。

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