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僕は君を連れてゆく

第1章 背中

《背中5》

いつも、背中に視線を感じていた。

初めて受け持ったクラスで戸惑いや不安があったけどなんとかここまできてる。

体育が担当の俺には進学校ではお荷物なのかな?なんて思ったけど、“体を動かせば頭も動く”をモットーに少しでも息抜きになるように、でも怪我しない程度に、受験を乗り越える体力をつけるように授業内容を工夫していた。

その視線は熱かった。
でも、振り返るとその視線の熱はすぐに冷める。

若い体育教師に憧れる女子生徒…いいよな…
そんなことをちょっとだけ、ほんとにちょっとだけ、思う日もあった。

しかし、その視線は女子生徒からではなかった。

生徒の二宮からだった。

熱い恋する視線じゃなくて残念だ、そう思った。

でも、相変わらず熱い視線。

気がつくと俺自身が二宮を見ていた。

何でもそつなくこなす。成績もいい方。

ただ、体力がない。

真夏でもジャージで体育の授業をうける。

その日は突然訪れた。

クラスメイトが二宮が体操着を着ないことをからかっていた。

「暑いだろう?脱げよ~」

「やだよ~俺、ガリガリだから嫌なんだよ~」

「脱がすぞ?」

「あっ!やっ、マジ?やめて!」

白い背中。
そこに浮かび上がる肩甲骨。

俺は息を飲んだ。

「あにすんだよぉ!もぉ!」
と、すぐに体操着を着てしまった。

あの日の夜。

風呂に浸かりながら1日を振り返ると二宮がでてきた。
違う。白い背中を思い出した。
いつも、ニヤリと俺を見て笑うあの顔。

綺麗な肌だなとは思っていたが今の、男子生徒は女子生徒よりも綺麗な肌をしてるのは結構いる。

あの背中…

触れたい…

自分の中にある欲望に驚いた。

「…っ!…あ…」

一人でシちゃった…

シャワーを被っても俺のなかからその背中を追い出すことは出来なかった。

あの日からその視線を感じる度にわかることがあった。

同じ。

熱い視線。

俺と同じ。

もうすぐ、目を合わせたい。

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