僕は君を連れてゆく
第44章 みんな、知ってた
ニノが戻ってきそうな気配に俺は席を立った。
別に飲みたくないけどコーヒーメーカーの前に移動した。
少しお尻の位置をずらしてニノに座るように促すリーダー。
こんなんは日常茶飯事で、もう、言葉なんか交わさなくても自然と体が動いてる。
と、俺は思っている。
さて、飲みたくないけどコーヒー…どうしよ…
「松潤、俺にくれる?」
救いの手を差しのべたのは翔さんだった。
「あれ?ラテは?」
「濃ぃ~いの飲みたい気分なわけよ。」
と、視線をソファーへ投げる。
だな。
俺は翔さんにカップを渡す。
濃いコーヒーが飲みたくなるくらい、あのソファーからは甘いムードが漂ってくる。
相葉くんなんて、当たるだけ当てられて…
ん?
相葉くんと目が合った。
わかるよ。
お疲れ。
ニノの相手は疲れるんだ。
頭の回転が早いから、こっちから仕掛けてもすぐにやり返される。
それでも、付き合い方が分かってるから20年なんだ。
続けてきたんだ。5人で。
「うわっ、濃いっ!」
「明日、胸焼け起こすんじゃない?」
「じゃぁ、甘いケーキ食べようよー!翔ちゃん!」
相葉くんがケーキを持ってこっちに来た。
「松潤は?一口いる?」
箱の中身を確認する。
「チョコかなぁ…」
「だよね、俺も。」
相葉くんがフォークで一口分俺に分けてくれる。
「あ~ん…」
「え?…うまっ!」
「おいし?」
「俺はチーズケーキ~」
「俺、そっちも食べたぁい!」
「じゃぁ、まさきくん、あ~ん…」
「美味し~」
「何やってんの?いい歳こいて…」
「女子会してる~」
なんて言われようだ…
ニノとリーダーがこっちを怪訝な顔で見てた。
俺らは三人で顔を見合わせて大笑いした。