僕は君を連れてゆく
第44章 みんな、知ってた
みんなが肩を組みながら出ていく。
なんなの、あのひとたち…
大野さんの顔を見たら思いきり眉毛が下がってて…
「ぷっ…なにその顔?」
その顔も好きなんだよ。
「子供かよ…」
「ぁんだよー」
二人で顔を見合わせたら、大野さんがどんな気持ちか、分かった。
「大野さん、俺、」
「待ったぁー!」
「へ?」
「俺が言う。」
「なんでよ?ここは大人しくしてていいよ。」
「いや、それはダメだ。」
「普段、話聞いてんだかわかんないくせに、こーいうとき、でしゃばってくんだよ!」
「相変わらず、可愛くねぇなっ!黙れったら、黙れい!」
「相変わらずって…」
「ん?」
「いいよ。聞くよ。早くしてよね。」
我ながら可愛くない。
でも、大野さんが俺に言ってくれるなら聞こうじゃないか。
もう、あなたの顔見てれば分かるけどね。
大野さんは大きく息を吐いた。
「お前は、俺のだ。だから、俺もお前のだ。」
「・・・・・?」
「聞いてんのかよ?聞こえたら返事しろぃ!」
「なにそれ…回りくどいんだけど…」
「うるせぇ!お前は黙って頷けばいいんだよ。」
って、俺を抱きしめた。
「えっ?!ちょ?!」
普通、“好きだ”とか“付き合ってください”とか言うもんじゃないの?
鏡に写る俺は大野さんの腕の中にいて。
その顔は幸せって。
大野さんの顔が見れないのがちょっとだけ悔しいけどね。
そっと体を離した。
見つめあってしまって…
なんだ、これ…笑いそう…
「いい?」
「は?なにっ!」
返事する間もなく大野さんに唇を奪われた。
しっとりと触れる唇は微かに震えていて。
俺たち…キスしてる…
「ずっと、こうしたかった…」
俺を抱き寄せ、耳元でそう言う。
こんなカッコいいこと言うあなたを俺は知らないよ。