僕は君を連れてゆく
第44章 みんな、知ってた
大野さんの家。
一度だけ来たことがある。
でも、どんなだったか全然覚えてない。
緊張しずきて全て忘れたみたい。
「この信号、渡ったらすぐだから…」
部屋のなかは独特の大野さんの匂いがする。
「変わんないね。」
「そう…だな…」
靴を脱ぎながらボソボソと話す。
「…同じ匂いする…」
「前もそう言ったな…」
前に俺がここに来たことを覚えてて。
俺が言ったことも覚えてて。
「こっち…」
リビングは…とても綺麗とは言えないけど。
「あ、出しっぱなしだ…」
とか言いながら足で脱ぎっぱなしの洋服やら帽子やらを蹴る。
昨日食べたのか弁当の空き箱もテーブルにあって…
「汚ねっ…」
って言いながらキッチンへ引っ込む。
俺はキャップをとってバックをおろした。
そして、飲み残しのペットボトルを2、3本持ってキッチンに。
「あっ…わりぃ…」
「ううん。」
脱いだ服を洗濯機に放り込む大野さん。
「ね、それとこれ一緒に回して大丈夫?」
「いつもやってから、いいだろ。」
「そう?」
一段落してソファーに座った。
「ありがとな…片付け…」
「別に…あなたらしい部屋って感じ…」
ふと、間が出来た。
「ニノ…」
「はい…」
「風呂入るか?」
「えっ!?一緒に!?やだ!」
「やなの?」
「いや、っていうか…無理…」
「なんで?」
「だってぇ…」
本当に疑問に思っているのか?
今までのコンサート終わりの風呂じゃないんだから。
無理でしょ…
だって…恥ずかしいじゃん…
あなたには言わなきゃ、わかんないの?
「は、はず、恥ずかしいでしょうよ…」
「なんで、たまに入るじゃん!みんなで」
「ここに…みんなはいないよ…」
そう言ったら大野さんは顔を真っ赤にした。