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僕は君を連れてゆく

第45章 ただ、ただ、愛しい







雅紀は、“α”だった。







泣き崩れる俺の母さんの横で歓喜で声も出ないんだろう。

何も話そうとしない雅紀の母親。


「こんなことってあるんだね」

雅紀は小さい声で言った。

俺は、ずっと、ずっと考えていた。

何で俺にはヒートがこないのか。

αなのに、興奮しないこの身体はどうなってるんだって。

ネットを使って調べていくと、一つの記事にたどり着いた。

それには、αだと思い込んでいたら急にヒートを起こしαである友人とセックスをしたと。

そのときに初めて自分がΩなんだ、と気がついたと書いてあった。

俺も、もしかして…

いやいや、そんな…

たまに、ニュースになっていた。

αだと、話していた俳優が実はΩで妊娠をして舞台を降板になった、とか。

Ωだと話していたスポーツ選手が実はαで所属するチームメイトを犯して妊娠させた、とか。

どれも、本当にΩでαなのか、最初から嘘をついていたのか真意はわからないけど。

そういうことだって、あり得るって。

だけど、
そんなドラマみたいなことが自分の身体に起こるなんて。

思うわけないだろう。

だって、俺はこれからどうやって…


「かず、帰ろう」

雅紀が俺に手をだした。

その手を握った。

温かくて大きな手。

母さんは雅紀の母親に寄りかかるように歩いている。

「雅紀、かずくんのお母さんとタクシーで帰るけどあんたたちはどうする?」

雅紀が俺を見た。
俺は首を横にふった。

雅紀は頷いて
「俺たちは歩いて帰るよ」

「じゃぁ、気をつけてね」


母さんの青白い顔。

取り乱した母さんの声。

「かず、ごめんね」

母さんが言った。


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