僕は君を連れてゆく
第45章 ただ、ただ、愛しい
それから、母さんは風邪をこじらせて入院した。
毎日、お見舞いに行きたかったけど外を出歩くのが恐かった。
学校にも2、3回行ったけどみんなが恐くて行けなくなった。
今まで散々、Ωのやつらを哀れんできたんだ。
口には出さなくとも、かわいそうだなって思ってΩのやつらと接してきた。
その俺がΩなんだ。
高校三年生になるとα、β、Ωでクラス分けがされる。
今黙っていたとしても三年生になればバレてしまう。
それに、ヒートがくるかもしれない。
そうしたら、匂いで俺がΩなんだとバレてしまう。
それが、恐い。
家には誰もいなくて、シリアルをお皿に出して牛乳をかけた。
バリバリと噛み砕いて腹に流し込む。
周りの雅紀への態度は180度変わった。
元々、いいヤツだったからαだったと分かったら、
周りは雅紀にベッタリだ。
おべっかつかって雅紀の両隣を狙ってる。
誰かと番になるのなら、雅紀がいいって。
手のひらを返したように、みんなが、雅紀、雅紀って。
それを聞いていたくないから。
雅紀がそれをどう受け止めているのか。
俺に対する態度を見てればなんとなくわかるけど。
あの冷たい目でまた、俺を見るのかと思うと雅紀と会うこともとっても恐い。
一人きりの家のなかは物音一つしなくて。
シリアルを食べ終えてまた、自室も戻りベッドへ潜り込んだ。
携帯にはクラスメイトからのメッセージがたくさんきてる。
それ見る限り、雅紀が俺がΩだとバラした様子はなくて。
それに、いつもホッとしてた。
だけど、雅紀から連絡がくることはない。
俺から連絡してないんだから当たり前ちゃぁ、
当たり前なんだけど。
『大丈夫?』、『何か欲しいものある?』って。
いつもなら、しつこいくらいに連絡がきてたのに。
αと分かった途端…
雅紀が恐い。
すごく、恐いんだ。