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僕は君を連れてゆく

第45章 ただ、ただ、愛しい

学校の担任の先生からの呼び出しもあって、
学校に行かないといけなくなった。

寝巻きがわりにしてる中学の時のジャージを脱ぐ。

インナーにしてるTシャツに手をかけて脱いだ。

姿見に写る俺はいつもと同じ。

ずっと、見てきた身体。

薄っぺらい胸に細い腕。

いつまでも中学生のときと同じで筋肉が全然つかない。

母さんと同じ白い肌。

ふと、ヒートの時の母さんが頭をよぎった。

自制が利かない身体。

息も荒くて、何かを欲するような瞳。

ぶつぶつと父さんの名前を呼んで、部屋のベッドに一人で籠っている。

何をしてるかなんて想像出来た。

父さんが来るまで抑制剤を飲んで、一人で慰めているんだろう。

父さんは母さんがそんなになってから、一時間以上待たせてやってくる。

母さんの部屋に入るときにいつも俺に現金を渡す。

そして、口角をあげて獣のような瞳で母さんの部屋に入っていく。

母さんの啼く声を昔は勘違いして、父さんがいじめてるんじゃないかと、こっそりドアをあけたことがあった。

そこから見た光景は今でも頭に残ってて。

いつも物静かな母さんの乱れっぷりに、たまにしか来ない父さんの容赦ない攻めに尻込みしたんだ。

「気持ち悪い…」

そんなことを思い出してしまい、ノロノロと着替えていたら玄関のチャイムが鳴った。



「はい」

インターホン越しに聞いた返事は雅紀だった。

「なに?」

玄関を少しだけあけて顔を出したら、いつものような優しい顔の雅紀がいた。

「一緒に行こう?」

「あ、う、うん」

急いで2階へ戻り着替えてリュックを背負い下へ降りたらキッチンに雅紀がいた。

「朝御飯、食べてないの?」

カップだけ置いてあるダイニングテーブルを見る雅紀。

「朝はあまり、食欲ないから…」

「そう…薬は?飲んだ?」

雅紀の顔をきちんと見るのが恐くて。

「飲んだよ、行こう…」

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