テキストサイズ

僕は君を連れてゆく

第45章 ただ、ただ、愛しい

家から学校へは徒歩だ。
バイトとか帰りにどこかへ行くときは駅へ向かう。

俺は雅紀の後ろを歩いた。

この前病院から帰るとき、どんどん歩いて俺との距離をあける雅紀だったけど、今朝はゆっくり、むしろ俺のペースに合わせてくれてるようで。

時々、後ろを振り返りながら歩いてくれる。

そんな雅紀の変化に俺の胸にチクっと何かが刺さった。

「おばさん、まだ、退院できないの?」

「あ、うん。何か採血の結果が良くならないみたいなんだ。点滴を変えてみるって、言ってた」

「ふーん。それで良くなるんだ?よくわかんねぇな。母ちゃんがお見舞いに、行きたいみたいなんだけどさ… 」

「行ってやってよ。俺しか行かないから…」

雅紀の家は俺の家と違って親父さんがいて妹に弟もいる。

うちも雅紀のとこも、
父親(男性・α)×母親(男性・Ω)

だから、どちらが産まれるかなんて、産まれてこなきゃわからない。

Ω、α、βが産む前に分かる出生前診断の技術は今の日本にあるそうだ。

だけど、それが導入されたら、誰もがαの子を産みたいだろう。
わざわざ、お腹を痛めて産むのに社会的に弱い立場になるΩを産みたい、となる母親は少ないだろうと、見送られている。

雅紀の妹さんも弟さんもΩだ。

だから、三人ともΩだなんてとよく陰で言われていた。

でも、三人とも成績も良かったし顔もいいし。
何より優しくて、とてもいい子で。

兄弟のいない俺には本当の妹や弟に思えた。

親父さんもいつも家に帰ってくる人で。

夫婦で並んで参観日に来てる姿をよく見ていた。

愛し合う、とはこういうことなんだなって。

本能が求めあうセックスだけじゃなくて、
心が、心から相手を求める、欲する。

それが、愛なんだなって。


学校に着いたら保健室に呼ばれた。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ