僕は君を連れてゆく
第45章 ただ、ただ、愛しい
保健の先生は女みたいな綺麗な男、櫻井先生。
俺は、苦手だ。
「二宮です、失礼します」
ドアを開けたら櫻井先生が机に向かっていた。
読んでいた本から目を離して俺を見た。
「待ってたよ」
少し声が掠れていて、痩せたように見える。
丸椅子に座るように促され腰をおろした。
「何で呼んだか、わかるよね?二宮くんのようにこの時期に性別が変わるって診断されるケースはそんなに多くはないんだ。今まで感じたことない気持ちを知ったり、戸惑うことも出てくると思うから、ここを頼って欲しいと思ってね」
「…ここ…を…」
「僕もね、Ωなんだ」
と、グレーのタートルネックをずらして見せてくれたのは噛み痕。
この学校は男子校だから、αの教師しかいないと思っていたけど、違った。
「驚いた?Ωでもね、番関係を持てば、多くの職場で働くことが出来るんだよ?ヒートを起こしてあちこちに匂いを振り撒くことがないから、特に未成年のいる場所は就職にも有利だ」
「子供いるの?」
先生は首を横に振った。
「いないよ。でも、欲しいね」
「やっと、ここで働けたのに?ヒートの度に仕事休んで、妊娠、出産でまた休んで…働いてるって言えんの?」
「…僕も同じこと思っていたよ。でもね、番が現れたら考え方は変わると思う。本能が言うんだ、この人の子供を…って」
そう言う先生の顔は優しさに溢れていて、ますます綺麗だ。
「なに?顔赤いよ?」
「別に…」
「思ってもないようなことがきっと、君を苦しめる。だけど、忘れないで欲しい。君を求めてくれる人が必ず、現れるから」
俺の両手を握り、力を込めながら言う。
抑制剤を毎日飲むこと、特効薬が保健室にはあること、とか、風邪っぽいとか少しでも体調がいうもと違うなと思ったら休んでもいいし、保健室に来てもいいと。
「先生…今、幸せ?」
「幸せは、誰かと比べるものじゃないよ」
素敵な言葉だけど、それを言う先生の顔はやっぱり綺麗で。
「……」
悲しそうに見えた。
俺は、苦手だ。
「二宮です、失礼します」
ドアを開けたら櫻井先生が机に向かっていた。
読んでいた本から目を離して俺を見た。
「待ってたよ」
少し声が掠れていて、痩せたように見える。
丸椅子に座るように促され腰をおろした。
「何で呼んだか、わかるよね?二宮くんのようにこの時期に性別が変わるって診断されるケースはそんなに多くはないんだ。今まで感じたことない気持ちを知ったり、戸惑うことも出てくると思うから、ここを頼って欲しいと思ってね」
「…ここ…を…」
「僕もね、Ωなんだ」
と、グレーのタートルネックをずらして見せてくれたのは噛み痕。
この学校は男子校だから、αの教師しかいないと思っていたけど、違った。
「驚いた?Ωでもね、番関係を持てば、多くの職場で働くことが出来るんだよ?ヒートを起こしてあちこちに匂いを振り撒くことがないから、特に未成年のいる場所は就職にも有利だ」
「子供いるの?」
先生は首を横に振った。
「いないよ。でも、欲しいね」
「やっと、ここで働けたのに?ヒートの度に仕事休んで、妊娠、出産でまた休んで…働いてるって言えんの?」
「…僕も同じこと思っていたよ。でもね、番が現れたら考え方は変わると思う。本能が言うんだ、この人の子供を…って」
そう言う先生の顔は優しさに溢れていて、ますます綺麗だ。
「なに?顔赤いよ?」
「別に…」
「思ってもないようなことがきっと、君を苦しめる。だけど、忘れないで欲しい。君を求めてくれる人が必ず、現れるから」
俺の両手を握り、力を込めながら言う。
抑制剤を毎日飲むこと、特効薬が保健室にはあること、とか、風邪っぽいとか少しでも体調がいうもと違うなと思ったら休んでもいいし、保健室に来てもいいと。
「先生…今、幸せ?」
「幸せは、誰かと比べるものじゃないよ」
素敵な言葉だけど、それを言う先生の顔はやっぱり綺麗で。
「……」
悲しそうに見えた。