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僕は君を連れてゆく

第45章 ただ、ただ、愛しい

保健室から出たら、体育教師の岡田先生がいた。

「お、はようございます」

この人も俺は苦手だ。

「お前…Ωなんだ…」

「え…」

血の気が引いていくのがわかった。

「顔に書いてあるぞ…」

俺は頬を撫でる。

「そんな顔してるとますますバレるぞ」

グンっと引き寄せられ、肩に腕が回った。

「い、イタタ…痛いって」

「少し、鍛えろ!自分の身体は自分で守れよ」

「かずっ!!!」

雅紀が血相を変えて走ってきた。

「ヒートでどーしよーもないときは頼ってくれてもいいぜ」

と、耳元で岡田先生が言った。

「なに、騒いでる」

掠れた声の櫻井先生が出てきた。

「生徒指導の一貫だよ。にしても…よく効くな…薬…」

櫻井先生が岡田先生を見る瞳は熱を宿していて。

それを分かってるのに、そこに触れない岡田先生。

二人の関係ってもしかして…

「今日は早退しろ?終わったら、家に行くから」

俺にしたように、櫻井先生の耳元で話す岡田先生。
でも、話の内容は俺たちに丸聞こえ。

「かず、教室行くよ」

雅紀が俺の手首を掴んで引っ張る。

「痛いって、なに?まだ、時間あるじゃん」

「いいんだよ、早く」

何を急いでるのか、俺をどんどん引っ張っていく。

「相葉、きちんと見てやれよ」

櫻井先生の言葉に雅紀は何の反応もしなかった。


「ね、ね、もう、離してよ」


「ねぇって!!」

掴まれた腕を振りほどく。

痕になってはないみたい。

「なんだよ、痛いし…」

「あの二人…番だよ」

「え?やっぱり…でも、岡田先生って…」

「そうだよ。この間、生活科の宮崎先生との間に子供産まれたよ」

先月、全校集会で発表があったばっかりだ。

じゃぁ、櫻井先生は?
番関係だけど、子供はいなくて…

悲しそうに見えたのは、そういうことだったんだ。

あんな綺麗な人が本能で求めても、番関係は持てても子供をつくることは出来ないってことなのか?

じゃぁ、番ってなんなんだろ。

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