僕は君を連れてゆく
第45章 ただ、ただ、愛しい
なんか、やっぱり、気持ち悪い。
昨日、病院に行き先生の前で一つ薬を飲んだ。
そして、今朝も。
学校に着くまでは良かった。
でも、着いて下駄箱に靴を入れるために屈んだらクラっと眩暈がする。
そして、靴をしまったけれど頭をあげるとやっぱり眩暈がする。
雅紀はどうだったんだろう…いつも、普通に学校に来てるように見えたけど。
この抑制剤も研究が重ねられ、多くの製薬会社が扱うようになった。
母さんが高校生の頃は外国製のものもいくつか出回っていたようで、それはかなりの副作用があったらしい。
それに苦しめられてあまり勉強出来なかったと言っていた。
飲んだ最初の日は学校を休んだ方がいいって言われたけど…
保健室、行こうかな…
でも、櫻井先生に会うのが…なんか…
ゆっくり、ノロノロと教室に向かって歩き出す。
「おはよー!にの!」
みんな、俺がΩだって分かっているはずだけど、
何もいってこない。
今まで通りに接してくれる。
と、思う。
教室で自分の席につくと、吐き気まで…
「かずっ…」
「顔色、悪いよ?保健室連れてってやる…」
「あ、ありがとう…」
雅紀がすぐに俺に駆け寄ってきて肩を貸してくれた。
保健室には誰もいなかった。
「今日、職員会議か…休んじゃえよ…」
奥に二つあるベッド。
カーテンで遮られていて一つは窓から光が入ってくる。
でも、俺が寝た方は蛍光灯の灯りだけしかなくて。
なんとなく薄暗い。
そっと、布団をかけてくれる雅紀を見つめる。
雅紀は俺の頭を撫でてくる。
「大丈夫…少し、眠りなよ」
雅紀がそばにある椅子に座り枕元に来てくれた。
「そんなに見んなよ…」
「フフフっ」
バンっと勢いよくドアの開く音がした。
俺たちは肩を縮ませて顔を見合わす。
「あれ?先生いないの?」
この声は松潤だ。
「消毒だけすればいいんじゃね?」
カチャカチャと何かを触る音がする。
「それ、消毒じゃねーじゃん!」