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僕は君を連れてゆく

第45章 ただ、ただ、愛しい

「どうだ?」

目を開けたら、櫻井先生がいた。

「ちょっと、ましになったかも」

「帰るか?」

「先生に聞きたいことあるんだけど…」

先生は椅子に座った。

「本当はαなのに、ずっと薬を飲んでたらどうなるの?」

「…Ωのヒートに対して少し、鈍くなったりするかもな。だけど、薬が抜ければそれもなくなるよ、本能で気づく」

「先生の運命の番って岡田先生なの?」

「…だと、いいね」

「運命の番って本当にいるの?」

「それに出会う確率はものすごく、低いって言われてるよね」

「先生は信じてる?運命って…」

「どうかな…でも、彼を、俺は信じてる」


そう言って、櫻井先生は微笑んだ。

女みたいに綺麗な顔、いいや、
女より綺麗な、優しい顔だった。

その顔に俺はやっぱりドキドキしてしまった。



結局、ダラダラと保健室にいるのもどうかと思って、三時間目から授業にでることにした。

教室に戻ると雅紀がすぐに俺のそばに来てくれた。

「大丈夫?」

「うん、ありがとう」

「……」

「ん?なに?」

「いや、なんでもない」

雅紀はなぜか、赤い顔してそそくさと席に戻った。

「にの~、大丈夫?」

斗真が俺の肩に腕を回してきた。

「もう、平気」

その腕を振りほどこうとしたら、

「生理かな?」

と、耳元で呟いてきた。

斗真はニヤニヤと俺を見てきて、

「なんか、ずいぶん、色っぽくなるよな~」

と言った。

「俺を抱きたい?」

「は?」

斗真は、俺の肩に回していた腕をゆるめて俺を見た。

「初めての相手だけは選ばせてよ」

斗真や、松潤たちは大笑いした。

だから、俺も笑った。

Ωだからって、αのやつらに見下されるなんて
まっぴらだ。

「じゃ、2番目に立候補しまーす!」

と、斗真がいう。

「斗真、乱暴そうだからイヤっ!」

わざと女みたいな声を出してみる。

「ニノには敵わねぇな~」

そう、誰かが言った。

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