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僕は君を連れてゆく

第45章 ただ、ただ、愛しい

それから、副作用は落ち着いた。

クラスのやつらとも今まで通りやっていけてる。

母さんも退院して今まで通り二人で生活してる。

雅紀とは…

俺が勝手に意識してるけど、いつも通りだと、思う。

「かず、帰ろう」

「俺、委員会出てくから先に帰ってて」

「そう、分かった。またね」

「またね」

こんな感じ。

俺がいつも雅紀にかけてた言葉をそのままかけられてる。

それが、Ωな俺が、心配なのか、かわいそうなのかはわからないけど気にかけてくれてる、それだけで嬉しかった。

今まで適当にしてきた部活、委員会にきちんと取り組むようにした。

これからは、Ωとして生きていかなきゃならない。

なるべく、たくさんのことを学んで身に付けていかなきゃ。

委員会の資料をまとめていたら、チャイムが鳴った。

気がつくと時計の針は最終下校時刻の18時30分をさしていた。

「やべぇ…こんな時間…」

太陽が沈むのがだんだん早くなってきて、暗闇が支配する時間が増えてくる。

そうなると、急に寒くなってくる。

下駄箱に外靴は一つもなくて。

「寒っ…」

明日は一緒に雅紀と帰れるだろうか。

門をくぐると駅に向かう人達で溢れていて。

待ち合わせなのか、時間を気にしてる人がたくさんいる。

あんなに怖かった行き交う人たちも、よく見れば俺となんら変わらない。

誰がαで、誰がΩで、誰がβなんて、ただ歩いてるだけじゃわからない。

駅に向かう人たちの波に逆らって、家路を急いだ。


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