テキストサイズ

僕は君を連れてゆく

第45章 ただ、ただ、愛しい

掴まれた左の手首。

「待って、雅紀、走れ、ないっ」

「あっ、和!!」

階段をのぼろうして足を踏み外した。

手首を掴まれていたから雅紀も一緒に転がる形になって階段の三段目から二人で落ちた。

「大丈夫?」

俺に覆い被さった雅紀は俺の後頭部に手のひらを回してくれていた。

どこも痛くない。

パチリと目を開けたら目の前に雅紀の顔。

「まさ、き」

「かずっ、薬飲んでないの?」

「風邪っぽいんだ…」

「これ、風邪じゃない…もうっ」

ゴクリと唾を飲み込んだ雅紀。

階段の踊り場でみつめあう俺たち。

「フフハ」

「笑い事じゃねぇって!立て」

立とうとしたけど、足首を捻ってしまい痛みが。

「いたっ、立てなっ、い」

雅紀は俺の足首を見て、しゃがんだ。

「え?」

「おぶってやるから、ほらっ!俺だってキツイんだよっ。早くしろっ」

雅紀の背中に体を預けた。

ふぅ~と大きく息を吐いてどこにそんな力があるのか、俺をおぶって走りだした。

どこに向かうんだろうか。

「部室。俺が鍵持ってるから」

ガチャガチャとドアを乱暴に開けて中に入る。

俺を部室にあるパイプ椅子に座らせた。

雅紀は俺をおぶって走ってくれたから息があがってる。

「雅紀、」

手を伸ばした。

「誰も来ないようにさせるから、それでヒート抑える注射持ってきてもらうから…」

俺の顔を見ない。

「雅紀、こっち見て?」

「ダメ、俺だって。我慢してんだよ」

「注射なんてやだ、雅紀」

雅紀の匂いがする。

「足が痛いの、見て?」

卑怯だってわかってるけど、こうすれば俺を見てくれるはず。

「くっ…どこ?」

椅子の前にしゃがみ俺の上履きを脱がしてくれた。

両方の靴下を脱がして左右差があるか、見てくれる。

「もっと、上も」

「え?」

ふくらはぎに雅紀の手がうつる。

「あっ…あ、まさき」

感じる、もっと、触って欲しい。





ストーリーメニュー

TOPTOPへ