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僕は君を連れてゆく

第46章 助手席

相葉ちゃんは俺らと同じ講義をいくつかとってる。

大学ではバスケットの推薦で入ってきたけど、早々に膝をケガしてしまい退部。

元々、人気者だったけどさらにバスケットをやめて時間に余裕が出来ると色んな声がかかるようで。

今年は大学のイケメンNO.1を決めるコンテストに出場した。一年なのに。

二宮先輩と、どこでどう出会ったのか。

あんな人気者が相手なら俺のでる幕なんてない。



「知ってる、つうか、相談されてた」

「はぁ?誰に?」

「相葉に」

「なにを?」

「相葉が二宮先輩のこと可愛い、可愛いって言い出して、テニスサークルに入ってるって教えた。バイトもいくつかしてて本屋とか深夜のコンビニとか、偶然会うようにしたらって…」

俺は挨拶を交わしたり、たまに昼飯食べたりする程度の仲だけど、松潤は相葉ちゃんから相談を受けるほど仲良しだとは知らなかった。

「……俺のこと、俺を応援してくれてるんだと、思ってたのに…」

怒りがふつふつ沸き上がってきて。

俺だけ、何も知らない。ニノ先輩のことも、相葉ちゃんのことも。

松潤のことだって…俺は、何も知らない。

でも、淡々と話す松潤の顔を見てたら、俺はなんて
惨めなんだろうって。

なんて、かわいそうなんだって。

「智に、二宮先輩は合わない」

「っえ?」

赤信号のライトが照らす松潤の顔を見る。

「俺、言ったじゃん、二宮先輩はやめとけって」

真っ直ぐに前を見てるからどんな表情してるのかまでは見えなくて。

「聞いたよ、聞いた!でも!」

松潤はハンドルをぐっと握り直した。

信号は青になった。

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