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僕は君を連れてゆく

第46章 助手席

流れる景色は溢れる涙で何も見えない。

こういう時、どんどん車は進んでいく。

「恋人がいるのにニノ先輩に熱あげてる俺のことバカにしてたってこと?なんで?教えてくれれば良かったのに」

泣きたくないのに、涙は溢れてきて声まで震える。

「話そうとしたけど、俺が二宮先輩の名前だすと智は全然話聞かなかったろ」

「なに、俺が悪いの?」

一体、どこへ向かっているのか信号を右折した。

「どこ行くの?もう、おろして。帰る」

松潤はそれから喋らなくて、真っ直ぐ車は進んでいく。

そして、コインパーキングに車をとめた。

松潤は降りて、助手席のドアをあけた。

「降りて」

降りたくないから松潤を睨む。
松潤は眉毛を下げて
「お願い、降りて。連れていきたいところがある」

松潤が手をだしたからその手に自分の手を乗せた。

グッと腕をひかれピョンと助手席からおりた。

そのまま、手を繋いで歩く。

「この時間がちょうどいいんだよ、来たことある?」

俺は首を横にふった。

ここは昔、小学校があった場所。統合されてしまい今は建物だけが残ってる。

来年から老人ホームへとリフォームされるそうだ。

松潤も俺も上京組だから、ここが地元ではない。

それなのに、ずんずん俺の手を握ったまま歩く。

「よく来るの?」

「…うん、頑張ろう!って自分をカツを入れたいときにね」

「そう」

大通りからそれたせいか、周りが住宅街だからなのかとても静か。

「あと、少し」

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