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僕は君を連れてゆく

第46章 助手席

「智、俺にしとけよ」

「俺なら、智に寂しいおもいさせない」

「智、俺を好きになれ」


目を瞑りたくなるような、体中がムズムズするような
甘いセリフが松潤の口からどんどん出てくる。


「俺には智しかいない」


「俺には智が必要なんだ」


「智、好きだよ」



後ろから抱き締められた。

背中に当たる、松潤の胸。

とても、早足な音に松潤が緊張してるんだとわかる。

俺の胸の前にある松潤の腕にそっと触れる。


「ありがとう」


「うん」


「そんなに俺が好きなの?」 


「うん。好き」


「世界中の誰よりも?」


「世界中の誰よりも」


「まだ、ニノ先輩を忘れられない俺でも?」


「俺が、忘れさせてやる」

松潤の腕と俺の手に俺の涙が落ちる。


体の向きを変えられ松潤と向き合う形になった。


「俺の助手席にこれからも乗ってくれる?」


「うんっ!」

俺はそう言って抱きついた。


力強く回された腕に顔をうずめる。


あったかい。


温もりが、想いが俺をあたためてくれる。


「智…」


「なに?」


松潤の顔が近づいてくる。


キス…


俺は少し、背伸びして頬に口づけた。


唇にキスはもう少し待って。

もうすぐ、俺の誕生日だから。

その時に、俺の気持ちと一緒に。


「帰ろ」

松潤は俺が口づけた頬に手を当てて笑った。


車の助手席の前で松潤がドアを開けてくれるのを待つ。

「どうぞ」

「ありがとう」


今年の誕生日は、うんと、楽しもう。

すでに傾きかけてる俺の気持ちを松潤にぶつけちゃおう。


「じゅん…」

「ん?なんか言った?」

「なんも言ってない」


名前で呼ぶのもいいかもしれない。


はやく、誕生日来ないかな…


【おわり】

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