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僕は君を連れてゆく

第47章   OTR  from.BB

「俺、おとりになろうか」

「おとり?!」

「うん。捕まえるにはそれが手っ取り早いんじゃないかなぁ」

そんなこと、今までの捜査でやったことがない。
おとり捜査、とは、年齢や職業を偽り相手方へ近づき、犯罪を誘発させること。

「手っ取り早いって…ダメだよ、危険すぎる」

「それは危険だ、よしやれ!とは言えない」

一課長の言葉に胸を撫で下ろした。

でも、ニノの顔はとても真剣で。

なんか、わからないけど、胸騒ぎがした。










目の前でニノが真っ黒なワンボックスに押し込まれていた。

それは、俺が呑気に二人分のコーヒーを買いに少し目を離した時。

「おいっ!何してる!」

ワンボックスはまだ、ドアが閉まってないのに発進した。

「待てっ!!」

ニノと一緒に飲もうと思ったコーヒー、小腹を満たそうと買ったチョココロネの入った袋。

それらを投げ捨て全力で追う。

「くそっ!待て!」

ちょっと、目を離しただけなのに。

どんなに必死に追いかけてもワンボックスとの距離は開いていくばかり。

ワンボックスは信号を無視してそのまま大通りを走っていってしまった。

「はぁ、はぁ、はぁ、ニノ…」

なんでだ?

犯人はあの辺りを歩いて犯行に及ぶのに。

車で。
しかも、ニノを車に押し込めた奴、車を運転する奴、少なくとも二人以上の犯行だ。

俺らが追っていたことは間違いだったのか?

「ニノ…」

口にガムテープが貼られ、目をタオルか何か白いもので目隠しされていた。

殴られたのか、たいした抵抗もしてなかったな。

「くそっ…」

俺は握った拳を地面に叩きつきた。

血が滲み猛烈な痛みが襲う。

でも、ニノの気持ちを考えるとこんなもんじゃない。

俺が、俺がもっとしっかりしてれば…

『もしもし、相葉。二宮が誰かに連れ去られました』

こんな報告をしなきゃならないなんて…







ニノ、必ず、助けにいくから。




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