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僕は君を連れてゆく

第47章   OTR  from.BB

ニノと付き合うようになって、半年がたった。

互いの家を行き来する程度で、忙しくて外でデートだって一回も出来ていない。

ましてや、数回、キスしたくらいでそれから先なんて…

それをニノが望んでいるのかわからない。
ニノは以前、オレオレ詐欺の容疑者に体を触られた、という事実がある。

ニノはそれを伏せていた。
ただ、殴られただけ、としかみんなに言わなくて。容疑者が取り調べの中でニノの体を触り服を脱がしキスをしたと供述して、明るみになったんだ。

怒りと共に、俺に打ち明けてくれないという寂しさが俺を包んだ。

もし、それが、あの事件がトラウマとなっていたら、男の俺に体を触られることに嫌悪感を抱くんじゃないか、と。

そういう雰囲気になって、本人から直接拒否をされたらさすがの俺も立ち直ることが出来るのか不安なんだ。

だって、好きなんだ。
ニノが。

大切なんだ。
ニノが。
今のこの距離を精一杯、保っているんだ。

ニノがまた、あんなことをされたら…
ニノはどうなってしまうんだろう…






「周辺の防犯カメラにはそれらしき人物は映っていませんでした」

住宅街で開発途中の町には防犯カメラの設置は整っていない。

市長である櫻井市長が市をあげて取り組んでいるのは知ってるけど…

「あえて、あの道路を狙っているということなんだな」

「僕もそう思います。やっぱり、街に詳しいやつの犯行ですね。で、二宮を襲った奴ですが…同一人物の犯行かどうかは疑問に思います」

「犯行手口が大胆すぎるな」

「はい。今、車のナンバーから所有者を割り出してもらってます。あと、Nシステムで車を追ってもらおうかと、」

「相葉…」

「……」

「自分を責めるな」

「でも!おれがっ!」

「泣き言言ってる暇あったら、捜査しろっ」

ニノと一緒に飲もうと思ったコーヒー。

課長が缶コーヒーを俺の前に置いていった。

溢れてきそうな涙をぐっと堪えた。



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