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僕は君を連れてゆく

第47章   OTR  from.BB

【松本潤の日常】


「相葉くん、領収書、これ通らないからっ」

相葉くんのおでこに領収書を貼り付ける。

「え?なんで?だめ?」

「ダメ、ダメ!」

「そうなの?えっー、かずからもなんか言ってよ~」

おや?
“かず”なんて呼んでる。

そんな、呼ばれた本人はにこやかに微笑んでいて。

おぉ!
貴重なスマイルじゃん!

「見惚れてるところ悪いけど、昨日の、ちゃんと使用報告書書いてね?♡かず♡」

わざと、名前を呼んでやった。

顔を真っ赤にしたニノは、今、相葉くんからかずと呼ばれたことに気がついたみたいで。

相葉くんをジロリと睨む。

相葉くんは、ごめん!ごめん!なんて言ってるけどあれは絶対にわざとで、周囲に牽制かけてんだと俺にはわかる。

「相葉!午後は一人で回れよ」

「えー、なんで?一緒に回ろ?ね?」

プイッと背を向ける。

ニノが誘拐された事件は公になった途端、ニノへの取材が殺到した。

男に襲われた警察官、警察官の色気に負けた父親、などなど、それまで多くいた被害者なんてそっちのけでニノのことばかりはやしたてられたんだ。

ニノはそんなの気にとめずに普通に仕事をしているように見えたけど、そう見えたのは相葉くんがそばで支えていたからなんだ。

犯人である父親はニノへの暴行を認め、下半身の露出や抱きつきなど全ての罪を認めた。

仕事への不満やイライラがねじまがった欲求となってあふれ、犯罪者となった。

妻は引きこもりの息子の犯行だと思っていたそうでやめさせようと父親と説得しようと考えていたらしい。

息子は息子で両親が自分を疑っていると分かり、同じような手口で誰かを襲い両親に罪をふっかけようとしていたらしい。

親も親なら、子も子だ。

三人とも、社会への不満を全く関係のない人へ当て付け発散しようとしていたんだ。

社会への不満が、根本の原因なんだから、と言われてしまえばそれまで。

でも、それを理性で抑えて理性で動くことが出来るのが人間だ。

罪は、罪だ。

取り調べをした相葉くんは殴りたいのをこらえ、必死に調書をとっていた。

そんな相葉くんをニノは見つめていた。

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