僕は君を連れてゆく
第49章 MJ倶ラブ 2nd.
「ようこそ、MJ倶ラブへ」
「え?なに?」
目の前に吸い込まれそうな瞳が。
「寒かったでしょ?」
「は、へ?あ、え?」
さっきまでの騒がしい喧騒が嘘みたいな静寂。
カウンターの中に一人の男性が立っていた。
真っ黒な大きな瞳に目を奪われたけど、オールバックにまとめられた艶のある黒髪。
白いシャツを腕捲りしていて綺麗な長い指がワイングラスを持っていた。
「あ、あの…」
「座って?何か食べよう?」
カウンターに等間隔に椅子が5つ並んでいてその中央あたりに彼は立ってる。
なんの匂いだろうか、すごくいい匂いする。
カチャカチャと食器を扱う音がしたら急にお腹が空いてきた。
立ち上がるとカウンターの中にいる彼は俺を見て頷いた。
中央の椅子に座るとカウンターの奥が見えてきた。
ウィスキーや日本酒がところ狭しと並んでいてグラスがたくさんかかっている。
「どうぞ」
彼はグラスに琥珀色の液体を注いだ。
グラスの中に気泡がいったりきたりしてる。
「僕も飲んでいい?」
グラスを持って俺に向ける。
「あっ、」
カチーンとグラス同士が重なる。
「happy new year!」
「おめでとございます」
彼がグラスを傾けていく。
喉仏が上下してく。
「綺麗だ」
って、何言ってんだ…
この男、本当に綺麗なんだ。
「ありがとう」
そう、微笑んだ彼を見て、俺もグラスに口をつけた。
「あ、うまい」
「よかった」
店内に客は俺しかいなくて、俺と彼の息遣いしかない。
腰に真っ黒なエプロンを巻いていて、シャツの前ボタンが二つ開いてて、そこに赤い痕が。
「ふっ…」
「なに?」
「ついてるぞ」
と、自分の鎖骨の辺りをつついた。
「ん?どこ?」
「ここ」
どこ?と言いながらもう一つボタンを外した。
そこから見えて真っ白な肌。
俺はゴクリと唾を飲み込んだ。