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僕は君を連れてゆく

第49章 MJ倶ラブ 2nd.

オレンジ色の暖かい照明が必要最低限に店内を照らしているだけなのに、彼の肌の色が真っ白なことが分かる。

「さぁ、食べて」

と、出てきたのは魚の煮付け。

「今朝とれたて」

「鯛?」

「好きでしょ?」

「あぁ」

グラスにまたシャンパンを注いでくる。

箸を渡され魚に手をつける。

ホロっとほどけていく身にフワッと香る出汁のにおいにますます食欲をそそられる。

「ぁあ、うまぁ」

淡白な白身は出汁をたっぷりと吸い込んでいてホロホロほどけるのにやわらかい。

どんどん、箸がすすむ。

「じゃぁ、これ」

次にお皿にのってでてきたのはお刺身だった。

そして、日本酒もすすめられるがままに飲んだ。

気がつくと彼もカウンターの中で椅子に座っていた。

俺は小さな劇団に所属してること、そこで来月に舞台があること。

それに向けて稽古をしてること、いつか、大きな舞台にたちたいと夢見てること。

日雇いのバイトで食いつないでること、今日も大晦日はスクランブル交差点で警備のバイトしてたこと。

年明けとともに若者のはしゃぐ声が一瞬、遠くに感じて、消えちゃいたいな、と思ったこと。

「俺がいるじゃん?」

カウンターを挟み伸ばしてきた指を掴んだ。

優しく微笑む彼の顔を見ていたらますます自分が小さい人間のように感じて泣けてきた。

「さぁ、続きしよ?」

「え?」









「んっ…」

ここはどこだ?

ふかふかの布団をかけられている。

夕べは…なんか美味しいもの食べてたくさんお酒も飲んで…

「あっ!」

あの彼は?

ガチャとドアが開いて入ってきたのは彼だった。

「よかった…起きた」

腰にタオルを巻いて首にかけたタオルで頭を拭いてる。

「あ、あのここは…」

「続きしよ?」

「えっ…」

なんの?と聞こうとしたら唇を塞がれた。

俺、風呂入ってないんだけど…とか、歯も磨いてないんだけど…とか、色んなことを頭がよぎって。

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