
僕は君を連れてゆく
第50章 こんなにも
「ん…」
寝て、スッキリすると思ったのに
体は怠くて。
部屋の時計はあれから二時間ほど経過していた。
喉もカラカラだ。
部屋からでるとリビングから漏れる灯りで
廊下はボンヤリと明るい。
テレビの音がして潤がいるのがわかる。
なんか、作ってもらおうかな。
ドアを開けたら潤がこちらを振り返る。
「どう?なんか食べる?」
「うん…お願い」
ソファに背凭れにもたれかかる。
やっぱり、もう発情期に入ってるのかもしれない。
薬を飲まないと俺が辛くなる。
飲んでいても体は疼いて仕方ないんだから。
だけど、今回は、いや、これからは岡田くんに
頼むことは出来ないかもしれないな。
「はい、水」
グラスに水を入れて持ってきてくれた。
薬も。
ピンクのカプセルを飲んだ。
「怠そうだから軽めにね」
おにぎりとお味噌汁をだしてくれた。
「あぁ、うまっ」
潤がウフフと笑った。
潤はまた綺麗になった。
「錦戸さん、元気だった?」
「え?あ、うん」
鼻の頭をポリポリと人差し指で掻いてる。
「もう、何年?向こうに行って」
「うん、まぁそのことで話したいことあるんだけど、発情期終わったらするよ、辛いでしょ?」
「いや、聞くよ」
お握りを頬張り、続きを促すと姿勢を正した潤。
「亮のそばにいたい、と思う」
「うん」
「亮の子供を産みたいんだ」
「…うん」
「亮についていこうって決めた」
晴れやかな笑顔、とは今の潤の笑顔のことを
言うんだろう。
「おめでとう」
「なんで、泣くの?」
「幸せにしてもらえよ?」
潤は俺を抱き締めた。
大好き人が幸せになるんだ。
涙ぐらい溢れるだろ。
俺の分も、幸せになって。
それは口にしなかった。
