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僕は君を連れてゆく

第50章 こんなにも

どれくらい
そうしていただろうか。

リビングのラグの上に二人で寝転び天井を見上げていた。

荒い息づかいが落ち着くと智は俺の胸に顔を寄せてきた。

「なぁ」

「う~ん?」

「首、誰に?」

「首?」

あの時見た、赤い痣。

こんだけ、体を繋げた後で聞くんじゃなんの意味も
ないかもしれないけど。

「あぁ、これ?じぃさんについてアフリカに行ったんだ。そのとき歩いたジャングルみたいなところ、わかる?密林みたいなさ、あそこで鳥につけてたネックレスをつつかれたんだよ。それで、ネックレスちぎれちゃってさ…」

「はぁ?」

「うん?ごめんね、翔くんからもらったやつだったのに…チェーン買い換えてつけるから、ね?」

「噛まれたんじゃないの?」

「鳥に?」

起き上がって智のうなじを確かめたら、あのときの赤い痣はなくなっていた。

「もう、綺麗になおったろ?」

「……っ…う、うっ……」

「また、泣いてる?どうしたの?」

離れようと思って、別れたのに。

お前は俺をとんでもない優しさで包んでくれた。

いつも、いつも、深い人だと思っていた。

優しさが、とんでもなく深い人。

そこが好きで、好きで仕方ないのに、そこに漬け込んで別れた。

だけど、その優しさは深いと同時に太いもので。

ちょっとしたことで、ブレない人だった。

「翔くん、もう一度、やり直さない?」

「俺で、いいの?」

「翔くんがいいんだよ」

俺を胸に抱き、頭を撫でてくれる。

そう、そうなんだ。

俺は智にしか甘えることが出来ないんだ。

「あっ…」

おしりからジワリと垂れてくるこの感覚。

「薬飲まなきゃ…」

「飲んじゃうの?」

「当たり前だろ… 」

「俺たちの子供…いつか産んでね?」

「智が産めよ…」

「やだ、出産ってすごく痛いって聞くもん!」

「俺が痛い思いするのはいいんだ?」

「いや、え?そんな言い方、ズルイよ~」




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