僕は君を連れてゆく
第51章 左斜め上
「はよ~」
「なぁ、昨日見た?」
教室に入るなり翔ちゃんが声をかけてきた。
「見たって?なに?」
鞄から教科書を出して机のなかにしまう。
「潤だよっ!潤!年上の女と歩いてたんだって!」
「へ~」
「へ~って…気になんない?」
「別に」
翔ちゃんは俺に話ながらも視線は教室のドアをずっと見てて。
「あっ!きたきた!待ってたよ~!松本くん」
我が学校の王子、松本潤がやってきた。
「おはよ!なに?テンション高くない?」
「あなたに聞きたいことがあるみたいよ」
「昨日の、誰?」
翔ちゃんと潤くんがやんや、やんや話してて、聞いてるんだけど、聞き逃さないように神経を教室のドアに向ける。
「マジかよっ!?姉ちゃん!?!?」
「そう、姉貴!」
「んだよ~、マジかよ~ってニノ聞いてる?」
「うん、聞いてる、なんでそんなショック受けてんの?」
高校生になってだいたいクラスのなかでもグループみたいのが出来上がってきて。
俺は翔ちゃんと潤くんとほとんど一緒にいるようになった。
高校生の話の中心はだいたい決まってて。
クラスの女子で誰が一番、可愛いか。
隣のクラスなら。
誰ならヤれるか。
そんな、話ばかり。
「ニノっ!」
教室のドアにもたれて俺を呼ぶ。
「なに?」
「なんで、先行くの?待っててよ」
クラスの女子がみんな見てる。
俺を通り越してこいつを。
「だって、お前、起きないじゃん」
「母ちゃんにめっちゃ、怒られんだから明日はちゃんと迎えに来てよね」
「はいはい!戻れよ」
「冷たっ!帰るよーだ!」
手を振って隣の教室に入っていた。