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僕は君を連れてゆく

第51章 左斜め上

プリンをスプーンで綺麗に食べ終えて緑茶の
ペットボトルで喉を潤す智を見る。

「特別…なのかな…」

「キス、したいだろ?」

「……」

なんてことを聞いてくるんだ。

答えに困ってると智は笑った。

「してみる?」

俺の顎に指をかけて顔を上に向かせて、
智の顔が傾き俺に近づいてくる。

え?!
えぇ?!
えぇぇぇーーーー?!?!

「目、閉じろよ」

「無理っ!」

「なんで?してみたらわかるかもよ」

「分かんなくていい、それに…好きな人としたぃ」

恥ずかしいことはわかっているが、そう伝えた。

「ニノ…可愛いな、お前」

「可愛くなんか…」

「誰だった?」

「ん?」

「今、好きな人、頭に浮かんだろ?誰だった?」

「好きな人…」

自分ではそんなことないって思ってたけど。

でも、智のこの顔は自信満々で。

「俺、そんなわかりやすい?」

「うーん…うん…アハハ」

笑ってんじゃん…

智はプリンの空き容器をゴミ箱に捨てた。

「俺しかわかんないかも」

「ん?どゆこと?」

それ以上は何を聞いても智は何も言わなかった。

コンビニからでたら潤くん、翔ちゃん、雅紀がいて腹が減ったから来たと。

俺を見て雅紀は眉毛を下げて少し困ったように笑った。

俺にしか聞こえない声で謝られた。

5人でワイワイしてたら、コンビニの店員のおっさんに静かにしろって怒られた。

急いで会計して外に出たら結構な時間で。

それぞれ買ったものは次に集まる時に食べようってコンビニの前で解散になった。

潤くん、翔ちゃん、智は電車に乗るからこのまま駅に向かう。

手を振って別れた。

みんなの背中が角を曲がり見えなくなったら右手を握られた。

左斜め上を見たら雅紀が俺を見てた。

ドクンドクンと心臓が動いて。

「送るよ」

繋がれた手はそのままに雅紀は歩きだした。


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