僕は君を連れてゆく
第51章 左斜め上
「この英文、単語変えて出るぞ」
「マジ?」
翔ちゃんが潤くんに明日のテストの英語を教えてる。
「ニノ、これなんだっけ?」
この部屋で雅紀と俺は…
「ねぇ、ニノ?」
「あ、なに?」
雅紀は俺を見てた。
全然、話を聞いてなくて。
「…何、考えてるの?」
「え?」
太ももに雅紀の手が触れた。
あの日、俺のをイカせた手。
体があの日の痺れを思い出して熱くなる。
雅紀が俺の耳元で囁く。
「今日は出来ないね…」
「…っ…」
背中がゾクゾクしてくる。
「も~う、やめたっ!」
「なぁ、コンビニ行かね?」
「行く、行く~!ニノと雅紀は?」
「俺たちはいいや、ね?ニノ」
「うん…」
二人が部屋から出ていく。
ドアがパタンと音を立てて閉まった。
雅紀を引き寄せ、唇を塞ぐ。
「雅紀…」
俺は気づいてしまったんだ。
あの雑誌を見た時から。
雅紀に抱かれたいって。
雅紀に俺を求めて欲しいって。
だから、雅紀にあの雑誌が渡るようにしたんだ。
大野さんから借りたあの雑誌。
キスしたい、どころじゃないんだよ。
俺の頭のなかはそんなところで止まってないんだ。
潤くんに「嬉しそう…」って言われたときはヤバかった。
雅紀の反応が嬉しくて、顔が緩んでるのが分かったから。
「何考えてるの?」
キスをしながら雅紀が俺に問いかける。
「ん?雅紀のこと…考えてた」
いつだって、そう。
きっと、あの雑誌を借りる前から俺のなかに
あった気持ち。
弾けたら、もう止められない。
いつも見上げた左斜め上。
これからはずっと、もっと、俺のもの。
「続き、しよ?」
おわり