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僕は君を連れてゆく

第52章 偏愛

「どう?」

「うん、」

「うん?」

「いつも通り、うまい」

「よかった」

フォークにクルクルとパスタを巻き付けて口に運んでいく。

トマト缶ときのこを使ったパスタで俺が好きなやつ。

「きのこをシーフードに変えて今度は作るのはどう?」

俺は口にいっぱいパスタを頬張ったから、潤を見ながら首を縦に振った。

潤がおもむろに俺に向けて手を伸ばしてきた。

モグモグと動かしていた口を止めた。

「ついてる」

右の口角に指をそっと置いて、そのまま潤の口のなかへ。

恥ずかしくてまだ飲み込んでないのに、またパスタを口に運ぶ。

「むせるよ?」

潤はにこやかに俺を見てる。

目がまた合って恥ずかしくて…むせた。

「ほらぁ~もうぅ~大丈夫?」

涙を流しながら口から吐き出さないように咳をする。

潤が立ち上がり俺の背中をさすってくれる。

「水、ほら、」

グラスを持たせてくれてゆっくりと飲んでいく。

「あー、あー、死ぬかと思った…」

「つめこみすぎ!泣いてんじゃん…」

ティッシュで俺の目元を優しく抑える。

反射的な目を閉じたら目尻に柔らかくて温かな感触が。

チュッと口づけられた。

「もう、大丈夫?」

また、むせた。




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