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僕は君を連れてゆく

第53章 ミモザイエロー


「聞きたくなる気持ち…わかるなぁ…」

「え?」

「俺だって、束縛なんてしたくないよ。されたくないしね。でも、相手のことが心配で気になって仕方ない気持ちはわかるよ」

「相葉さんは言わないんですか?」

「うーん。その時によると思うけど…心配になったら言っちゃうよ。すぐ迎えに行くよ、とか言っちゃう」

「えぇー。そうなんですか?」

「そうそう。それで本当に来たの?みたいな顔される」

「付き合いたての頃は、それが嬉しかったのに…今は鬱陶しくてたまらないんです」

「……」

「なんでだと思います?」

少し潤んだ瞳で見上げられた。

俺は勘は冴えない方だけど、こういうのはなんとなくわかる。

「他に気になる人でもいるの?」

「いるって言ったら…幻滅しますか?」

視線を外さずに真っ直ぐに俺を見る。

「しないよ」

俺は視線をそらした。

「…すいません、話聞いてもらってありがとうございます、また、話聞いてください」

彼女はコーヒーごちそうさまです、とペコリと頭を下げて走って行った。


家に帰ったら和はもうすでにベットの中だった。

寝息を立てる唇をそっと塞ぐ。

「ただいま…」

起きないように小さい声で話かけた。

今までも、こんな風に誰かに好意を寄せられたことはあった。

でも、ハッキリと言葉にされる前に恋人がいると、話してきた。

それでだいたい相手はひいてきたんだ。

今回は…彼氏がいるけど…って…

余計な気を使わせたくない。

俺には和しかいないんだ。

シャワーを浴びて和の隣に入り込んで俺も眠った。

起きたら和はもういなくて。

テーブルにメモ書きが置いてあった。

冷蔵庫を覗くとお弁当があった。

「ありがとう、和」

【お弁当、ありがとう。今日は早く帰れるようにするね】そうLINEした。

【有り合わせだけど…行ってきます!行ってらっしゃい!】と返事がきた。

それだけで、今日一日、頑張れそう。

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