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僕は君を連れてゆく

第53章 ミモザイエロー

Kazunari


俺は週に2回ほどお弁当を作っている。

ついでに雅紀の分も。

最初はそれなりに手のこんだものを作っていたけど今じゃ冷凍食品に頼りきっている。

そろそろ、昼食だなぁとデスクの上を片付けてパソコンを閉じようとしたら社内メールが届いた。
新人の歓迎会のお知らせだった。

そんな時期になったんだ。

雅紀と知り合ったのは学生の時。

雅紀の部屋の玄関を開けたら雅紀が女の子といい感じになってるところを目撃してしまい。

その時に自分の気持ちをはっきりと自覚した。

俺は雅紀が好きって自覚した。

それから付き合うようになって…
今に至る。

ってことは、俺はゲイなのか…。

「おぉ!うまそっ」

見上げると濃いイケメン。

「なんだ、潤くんか」

「悪かったね、可愛こちゃんじゃなくて」

「そこは、別に全然いいんだけど…」

隣いい?と社内の共有スペースでお弁当を広げる俺の隣に座ってきた。

「いい、なんて言ってないけど」

ジロリと目を見てやると、笑った。

バックから出てきたのはタッパーで。水筒。

「最近、野菜ジュース作ってんのよ、飲んでみてよ」

「え?」

それは、なるべくお断りしたい。

でも、真っ直ぐに俺に笑顔を向けて水筒を差し出す彼にいらない、なんて言えない。

「頂きます」

ゴクン

「あんまうまくはないんだけど…」

「うぇ…」

「うぇって…ひどくね?」

この液体は本当に腹腔内におさめていいのだろうか。

口に含んだ途端に広がる苦味。

青野菜の苦味なのか?

俺は自分のペットボトルのお茶をゴクゴクと飲んだ。

口の中、食道、胃の中も綺麗になるように。

「俺、食事は普通に食べたいわ…」

「そう?」

潤くんは水筒をまた傾けた。

潤くんの濃い顔はその飲み物のせいなんじゃ…

「はぁー、苦い」

苦いの?でも飲むの?

潤くんの気持ちは俺には理解できる日がくるだろうか。

お弁当に入ってる卵焼きを口にいれた。

「なんか、味変わったような気がするんだけど」

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