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僕は君を連れてゆく

第53章 ミモザイエロー


「悩むっていうか、こんなことで悩む自分が嫌なんだよ」

運ばれてきた、鮭のバターソテー定食。
お箸で鮭を半分する。

「向こうはきっと、俺があんなことで悩むなんて思ってないだろうし。自分でもただ普通に聞けばいいんだって思うんだ。それなに?とか、どうしたの?って。向こうも何でも聞けって言うしね。でもさ、嫌なんだよ。こんなことで悩む自分が」

口に入れないでひたすら一口サイズになるよう鮭に箸をいれて。

三人もトレーに乗ったランチが運ばれてきてるのに手をつけず俺の話を聞いてくれる。

「そんなことで悩むの?って言われるのも嫌だし、そんなことで悩ませるなよ、とも思うし…」

「好きなんですね」

「彼女さんのこと、大切だから言えないし、聞きたくないってことですよね?」

そうなんだろうか。

そんな言葉で俺のこのぐちゃぐちゃな気持ちを整理してしまっていいんだろうか。

「怖いんだろ」

パクっと唐揚げを口に入れて喋り出した潤くん。

それを見たみきちゃんとあみちゃんもお箸が動き出した。

「自分の本心を相手にぶつけて嫌われないかってことだろ?」

「……」

「ニノの話、聞いてるとさ自分の本心は隠したいのに相手のことは何でも知りたいって聞こえるよ。そんなの都合良すぎじゃね?自分の気持ちぶつけないと向こうだって本気できてくれないんじゃない?」

「……」

「好きだから、本音が言えないって…わかるような気もするけど…好きなら本音でこいよって俺は思うけどね」

「潤みたくみんながみんな、そうなれないでしょ」

「そう?」

「嫌われたくない気持ちは誰にだってあるよ」

みきちゃんとあみちゃんは俺をフォローしようと言葉を繋いでくれる。

けど、
立ち上がれない。

それくらい、潤くんの言葉は俺に突き刺さった。

「向こうがどうしたいか、じゃなくて、お前は?ニノはどうしたいの?大事なのはソコだろ」

溢れてきそうな涙を必死にこらえた。

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